高らカニ

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歌を聴くとき歌詞をどれくらい意識する?

「歌の歌詞ちゃんと聞いてる?」

みたいな話題たまーにTLでオタクが喋ってるのを見かける。

いきなり結論だけどこれに関しては「曲による」としか言いようがない

SOUL'd OUTの歌詞を注意深く聞いてる人がいたら心配になるし、逆にMOROHAを歌詞も聞かずにぼーっと聞き流してる人がいたらその人とは今すぐ距離を置きたい

 

SOUL'd OUT 『1,000,000 MONSTERS ATTACK』 - YouTube

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MOROHA「革命」MV(監督:行定勲 MOROHA BEST〜十年再録〜より) - YouTube

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と、これでこの話題について話すのを終わらせてしまうことはできるのだが

せっかくのコロナ療養期間だしもう少し歌詞を聞くということについて深堀りしてみようかなと思った。

 

全然理解できなくてもいい曲はいい

そもそも歌詞を完全に理解しようなんてのはエゴであり

作詞者本人がこういう意味だよと公言でもしていない限り我々は

あーこの歌はこんなことを言ってるんだなあという程度に理解した気になることしかできない

ましてやわかりやすい表現を使って声という感情で直接的に殴ってくるMOROHAのようなアーティストならまだしも

メタファーをふんだんに盛り込んだ詩的な(という表現が正しくないことは承知だが)歌詞については

曲全体のテーマすら掴むことがむずかしいという場合があるのも事実。

 

正直に申し上げると私は数年前までずっと真夜中でいいのに。が好きではなかった。

歌詞に意味を持たせているような含みがあるのにその一切を理解させる気すら感じなかったからだ

少し具体的に話すとACAね氏の書く詞には圧倒的に主語と目的語が足りない

補うこともできないくらいに複雑な文構成をしているにもかかわらずである

例として代表的かつ最も難解な曲の1つである『秒針を噛む』を挙げてみたい

 

  生活の偽造 いつも通り 通り過ぎて(←何が?どこを?)

  1回言った(←誰が?誰に?)「わかった。」戻らない

  確信犯でしょ? 夕食中に泣いた後(←たぶん「君」が?) 君は笑ってた

 

  「私もそうだよ。」って 偽りの気持ち合算して(←たぶん「君」が?)

  吐いて(←何を?) 黙って(←誰が?) ずっと溜まってく(←何が?)

  何が何でも 面と向かって「さよなら」

  する資格もないまま 僕は(←ここで初めて明確な主語)

 

ここまで主体も客体も具体性を帯びないまま進んでいく歌はとても珍しい

Aメロが終わってなお何の曲なのかが全く分からない(おそらく別れの歌)

日本語らしいのに日本語に感じない、情景が一切思い浮かばない

だから聞いてて気持ちが悪い、それが当初の率直な私の感想だった(ずとまよファンの人はできれば怒らないでほしい。代わりにあなたは私に対して臆することなく私の好きなものについての批評ができるのだから)

 

ずっと真夜中でいいのに。『秒針を噛む』MV - YouTube

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ちなみに先ほど数年前までずとまよが好きではなかったと述べたが、それはつまり今は好きだということだ。

今では歌詞を聞き流すことができるようになり、無事SOUL’d OUTと同じ分類として聴くことができるようになった(元々音楽としては素晴らしいことを知っていたから)

 

歌詞が難解で理解できないというのはなにもずとまよだけの話ではない

崎山蒼士の『五月雨』を理解できる人間もそうはいないだろう

崎山くんが13歳のときに作詞したあの歌詞を、である

 

崎山蒼志「五月雨」(MV) - YouTube

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一貫してテーマすらわからないまましかしどこか美しさを感じながら聴いていると

果ては情景のようなものすら脳裏に浮かんでくる

歌詞などこれぽちも理解していないのにもかかわらず。

この現象を言葉で説明することは難しいが

有り体に言ってしまえば、「それっぽい雰囲気で分かった気になる」ことができる

お洒落さとは一部そういうものなのかもしれない

そして崎山くんという若い才能に畏怖することが、いっそ気持ちいいとさえ感じさせるための難解さであると言ってしまえるかもしれない

かもしれない

 

メタ要素は歌詞を読むだけではわからない

アーティストは自身の楽曲に様々な意味を込めるがそれは当然本人の経験や社会情勢に本人の解釈が盛り込まれてそのアーティストだけの表現となっている

しかしJ-POPに標準的な4分程度の楽曲の中で人生すべての経験を詰め込むのは不可能であるから

歌詞の中では決して語られない前提となる知識や経験が土台となって存在することがしばしばある

そういった土台は本人が語らなければ、そしてそれを知らなければ当然我々が理解する由もない

しかしそういった裏側を知ることでより深く楽曲の事を理解し、楽しめるようになることもあるという意味で

これらのメタ要素は欠かすことのできない面白ポイントなのである

 

マキシマム ザ ホルモン 『予襲復讐』 Music Video - YouTube

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中学時代のいじめの経験を歌っていると知って聴くのと知らずに聴くのでは感じ方は全然違う

 

FLOATIN' / 舐達麻 (prod.Green Assassin Dollar) - YouTube

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1.0.4というクルーが金庫強盗の逃走中に事故で亡くなった過去を歌ってると知ってから聴いてもあんまり感じることは変わらないですね。アホがアホな経験をエモく歌ってるだけなので。

 

HIMEHINA『うたかたよいかないで』MV - YouTube

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いなくなってしまった元ゲーム部の4人に向けられた曲であることを知っている人は案外少ない。

京アニ放火事件を受けて作詞された曲でもあることを知っている人はほとんどいない。

 

HIMEHINA『水たまりロンド』MV - YouTube

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今の時代を生きている人間であればコロナ禍に自由を求める気持ちを歌った曲であることは察せられる

ジョージ・フロイド氏の事件についても歌っている、ということを歌詞だけから理解できるほど国際的な人種差別への意識を持っている日本人オタクはそういない

 

 

HIPHOP文化にありがちのリリックの引用ってのもここに含まれるのかもしれない

詳しくないからあんまり下手なこと言えないけどね

 

世の中の9割以上の曲は歌詞を理解してもしなくても好きになれる

例えばごりごり恋愛の歌など私にとって共感できるはずもない

だから歌詞の理解は正直大きな問題ではなく、美しいメロディラインとかかっこいいベースフレーズとかリズムパターンとか、それだけで十分楽しめる

とはいえひとつの創作物語を読んでいるような気分で歌詞を楽しむこともできる

人並みに美しさを感じたり切なさを覚えたりするものだ

このあたりの感性は感情のない悲しき一部のオタク達には理解できないかもしれないが

 

back number - 瞬き (full) - YouTube

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back numberが好きということを恥ずかしいなどと思ってはいけない

 

Official髭男dism - Pretender[Official Video] - YouTube

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なんか美しっぽいじゃん

 

 

また一般に歌詞が重要とされる楽曲であっても全く共感できないことは少なくない

多くの人が泣いたとコメントしている歌に共感できずにいることは少し寂しいが

それはそれでそういうもんかと割り切ってしまってもいい

 

命に嫌われている。/初音ミク - YouTube

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私はこの歌詞に共感などできた試しがない。そもそも理解できている自信もない。

 

Creepy Nuts / かつて天才だった俺たちへ【MV】 - YouTube

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私はいまなお天才なのでこの曲は私に向けられていない。

 

 

あとはそう、海外楽曲なんかもそうだ

訳しながら意味を知ることはできるがそのニュアンスは母国語で感じるものとは異なる

ましてや聴きながら理解するのはほぼほぼ不可能であるから

海外の楽曲は完全になんとなくで聴いていると言っていいだろう

 

最後に

私の周りには歌詞を聞かない人が多いようだ。というかそもそも聞き取れないとか。

聞き取れないはまあ耳を強くしてもらうとして、歌詞は聞こう。一旦聞いてみよう

その上でどう思ったか考えてみてほしいなと思った。この記事に対してね

本当はもっと語りたいことあるんだけどこれ以上長くなるとまた記事が完成せずお蔵になってしまうから

とりあえず世に出すことを目的にここで打ち止めることとする。以上